藤本タツキ『さよなら絵梨』本編
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496858728104
どこが演出でどこが実際の出来事かが分かり辛い作品なので、人により考察内容が異なります。
あくまで私がどう感じたかというのが分かってくだされば幸いです。
『デッドエクスプロージョンマザー』ラストの爆破シーン以外は母の注文で息子が映像を撮っていました。
本来映像はTVプロデューサーの母が自身の闘病生活をドキュメンタリー番組にする予定でした。
しかし母の意図が外れ、息子が撮った映像は自主製作映画『デッドエクスプロージョンマザー』として編集されて、中学校の体育館で放送されることになりました。
・TV局と縁のある母が死んでしまったのと、息子の映像のセンスがTV向きではなかったのとがあってか、TV局に映像が売れなかった。
・母の死に目を撮ることができなかったため、映像にオチがついてなかった。
息子は固定カメラをセットして自分が病院から逃げ出すように走って「さよなら母さァーん!!」と叫んで病院を爆破するシーンを撮り、それをオチとして自主製作映画を完成させました。
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映画放映後先生に捕まって詰問される息子
先生「ラストなんで爆発させた?」
息子「最高だったでしょ?」
晩御飯を食べる父に息子が質問
息子「僕の映画と言ったらナニ?」
父「……爆発? 爆発かなあ……。優太(息子)はちっちゃい頃から何にでもファンタジーをひとつまみ入れちゃうんだよね」
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病院を爆発させた理由は息子が建物を破壊させるのを最高だと感じてたからでした。その爆発は息子のファンタジー要素です。
母の死を哀れんだとか嬉しかったとかではないです。
息子が初めて絵梨に出会ったのは病院の屋上だと漫画では描かれていますが実際は違います。
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絵梨死去の映画放映後に絵梨の友達から語られた、絵梨の設定について
撮影モード | 普段 |
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眼鏡じゃない 息子の恋人 美化されている |
眼鏡 息子とは付き合っていない 嫌な女 |
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病院の屋上にいる絵梨は撮影モードであり、すでに映像の中の住人です。
この映像モードに入るまでに歯の矯正を経ています。部分矯正は大体6~10ヶ月、全部矯正は1年半かかります。絵梨の元の歯並びがかなり綺麗だったとしても、最低6ヶ月はかかっています。
病院の屋上で出会うその6ヶ月以上前に絵梨は息子の映像に感化されて、息子の映像の中に出る決意をして歯の矯正を行いました。
絵梨が見て感化された映像は『デッドエクスプロージョンマザー』の完成品だったか部分だったかは不明です。
「それは映画の中にいる僕のことで、現実の僕はそう上手くいかなかった」というセリフの後に将来の息子の行く末を描いていますが、これは全部脚色なのではないかと思います。
物語として不自然な点
・今まで映像で丁寧に物語を作っていたのに、台詞だけでさらっと物語が進んでしまう
・絵梨が年取ってない(吸血鬼だから?)
・絵梨が撮影モード(息子の幻視?)
・絵梨の吸血鬼設定は今までは息子が絵梨に押し付けていたのに、絵梨が自分から吸血鬼だと語っている
・父の演技できるという伏線が回収されてない
・息子は映画を作るために絵梨に映画を見せられ続けていたのに、ドキュメンタリーしか作っていない
・息子成人後の話もコマ割りが全部四角であり、全部が映像作品のようになっている
・成人息子には妻と娘ができたが、妻も娘も映像に一切出てこない
上記の不自然な点を鑑みれば、息子成人後の話の真相が見えてきます。
絵梨が死んだとされたドキュメンタリー映画はあくまで絵梨が主演のドキュメンタリー風の映画であり、絵梨は病気では死んでませんでした。
絵梨死亡ドキュメンタリーの後に未来の息子の話を制作。
成人した息子がベッドの前で「僕が運転ミスって同乗してた妻と娘と父が死んだんだけど」的なことを語るシーンは、あれは父が成人した息子になりすまして出演していました。
成人息子(父)が自殺するために廃墟に行ったら若いままの絵梨が登場。そりゃ年月立ってないから若いままですね。
成人息子(父)が廃墟を出る前に絵梨が一言「ファンタジーがひとつまみ足りないんじゃない?」。廃墟を出ると同時に廃墟が爆発。今までのは映像作品だったと読者に示す。
こういう流れが自然です。
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映画放映後先生に捕まって詰問される息子
先生「ラストなんで爆発させた?」
息子「最高だったでしょ?」
晩御飯を食べる父に息子が質問
息子「僕の映画と言ったらナニ?」
父「……爆発? 爆発かなあ……。優太(息子)はちっちゃい頃から何にでもファンタジーをひとつまみ入れちゃうんだよね」
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最後の爆発のシーンは息子的には最高なオチでした。
「ファンタジーをひとつまみ」というフレーズは父と絵梨が1回ずつ使いました。父と絵梨は面識ありましたが、フレーズを表立って共有することはなかったです。初めに使った父の「ファンタジーをひとつまみ」は脚色ではなく現実の反応であり、二度目の絵梨の「ファンタジーをひとつまみ」は脚色だと考えるのが自然です。
絵梨は映像中は全部撮影モードで脚本ありきだったので吸血鬼ではありえないです。
もし脚本抜きにして本当に絵梨が吸血鬼で年をとらない体質だったとして、絵梨は周りと体の変化が合わないので学校に行くことはないです。小学校から在学する場合は絵梨は背が高すぎるのと、中学に在学し続ける場合は留年しすぎるのとがあって、かなり無理があります。
漫画の中で映画は下記のように公開されました。
母の死を描いた映画『デッドエクスプロージョンマザー』は息子が中学1年の時に文化祭で公開。
絵梨主演の映画は息子が在学中に文化祭で公開。絵梨が同学校にいるため、中学校だと思われる。
父主演の映画は完成。公開されたかどうかは語られず。
私の希望としては、
息子中1で『デッドエクスプロージョンマザー』を公開。
息子中2で絵梨主演映画を公開。
息子中3で父主演映画を公開。
という流れだと綺麗で良いですね。
公開された映像の内容について、
中1文化祭で『デッドエクスプロージョンマザー』を映像公開。
中2文化祭で前作『デッドエクスプロージョンマザー』含め、絵梨に会って絵梨が死ぬまでを映像公開。
中3文化祭で漫画『さよなら絵梨』全部を映像公開。
という風に、漫画の流れに沿って公開映像を長くしているのかもしれません。
絵梨の死後に絵梨の友達が絵梨を語った場面の後、映像の中に母が生きた状態で写っています。綺麗な母を撮って、綺麗な母を思い出すということの暗喩として受け取るのが自然ですが、内心1割ぐらいあれは本当に生きているのだと解釈することもできます。
絵梨が闘病するシーンが撮影だったとすると、息子は病院のベッドが借りられると知っていたことになります。
母が死んだシーンも絵梨の場合と同様に病院のベッドを借りただけであったとしたら、実際には母は病気などではなく普通に生きているという可能性があります。母の死のドキュメンタリーは母と父と息子が演じた疑似ドキュメンタリーだったという話ですね。
本当に母が死んでなかったとすると、上に書いた「母の誤算」の内容がかなり苦しくなりそう。